06.〝取引量と勝率〟が複利運用において最も重要

Posted on February 4th, 2021Updated on February 5th, 2021
06.〝取引量と勝率〟が複利運用において最も重要

※ この記事は最終更新日から3年以上が経過しています。

どんな記事?

投資における資金管理には「単利運用」と「複利運用」があります。

一般的にイメージされる勝率やリスクリワード(損失に対する利益の大きさ)は、その多くが単利運用におけるものです。

そのイメージのまま、複利で運用してしまうと、

単利運用よりも不利な運用になってしまう

ということが起こります。

これは、記事を読んでもらうための煽りではなく、想像以上に多くのトレーダーに生じている問題だと思います。

そして、**その問題を左右するのが〝取引量〟**です。

この記事を読むと、その根拠と対策が分かります。

前提となる知識

この記事を読むにあたって、いくつか必要な知識があります。必要に応じて、リンク先の記事をご確認ください。

複利の威力

「複利運用で時間を味方につけると大きな利益になるよ」という記事です。10年の単利運用で500万円の利益が、複利の運用では2892.5万円になります。

複利の罠

「単利運用で勝てる手法であっても、同じ手法を複利で運用すると負けることがある」ということを紹介しています。

リスクの取り方が重要

次の図は、単利運用と複利運用の損益分岐点を表すものです。

単利運用と複利運用の損益分岐点

各グラフが「単利運用と複利運用の別」と「1トレードに取るリスク」を表していて、このグラフから以下のことが読み取れます。

  • 単利運用は、リスクの割合に関係なく一定の損益分岐点になる(2%~20%のすべてのグラフが重なっている)
  • 複利運用は、リスクが大きくなるごとに必要な勝率とリスクリワードが大きくなる(グラフが右上に移動していく)
  • 勝率が高い手法では単利と複利の乖離が小さい
  • 勝率が低い手法では単利と複利の乖離が大きい

つまり、複利運用は、

  • リスクを大きく取ると不利になる
  • 勝率の低い手法だと不利になる

ということが分かります。

ここで筆者が注目しているのは、2%のリスクでは単利と複利にほとんど差がない という点です。

リスクは取引量とロスカット等の決済のロジックによって決まります。決済のロジックは手法に依存するので、トレーダーは取引量でリスクを調整します。

勝率の影響

次のグラフは、リスク2%の複利運用のシミュレーションです。

勝率:80%、RR比:0.5、リスク:2%
勝率:80%、RR比:0.5、リスク:2%

勝率:30%、RR比:3.0、リスク:2% 勝率:30%、RR比:3.0、リスク:2%

いずれも元金は100万円(1M)です。どちらも大きな利益になっていますが、グラフの印象が大きく異なります。

2つのグラフは、いずれも期待値がリスクに対して0.2倍の手法です。

勝率80%70%60%50%40%30%
RR比
0.50.20.05-0.1-0.25-0.4-0.55
1.00.60.40.20-0.2-0.4
1.51.00.750.50.250-0.25
2.01.51.10.80.50.2-0.1
2.51.81.451.10.750.40.05
3.02.21.81.41.00.60.2

期待値=勝率×RR比(1勝率)\small{ \text{期待値} = \text{勝率} \times \text{RR比} -(1 - \text{勝率}) }

損益分岐点のグラフを確認すると、同じ期待値であっても損益分岐点からの距離が違うことが分かります。

損益分岐点と期待値0.2倍

期待値で揃えても正確な比較はできないようですが、勝率重視の方が有利なのは間違いなさそうです。

破産の確率を確認する

100万円の資金があるとして、リスクを2%すると2万円の損失しか出せません。

100株の取引だとすると1日の変動幅が200円程度の銘柄しか取引できないということです。ドル円で変動幅が1円とすると2万通貨の取引です。ロスカット幅によってはさらに少ない取引量になります。

ほとんどの人が、これでは少ないと感じると思います。

ここで登場するのが破産の確率です。

例えば、勝率重視の手法の場合、破産の確率に応じて次のように取るリスクを増やすことができます。

勝率:80%、RR比:0.5の手法における破産の確率

2%8%9%26%27%
単利0%0%0.01%3.24%3.68%
複利0%0%0%0%0.01%

破産の確率を0%に抑えることを前提とすると、単利運用では8%、複利運用では26%のリスクを取れそうです。

一方で、RR重視の手法では、単利で1%、複利で4%程度しかリスクを取ることができません。

リスクを大きく取れるという点でも、勝率重視の手法が有利であると言えそうです。

複利の威力

ここで、前述のグラフをもう一度確認します。

勝率:80%、RR比:0.5、リスク:2%
勝率:80%、RR比:0.5、リスク:2%

勝率:30%、RR比:3.0、リスク:2% 勝率:30%、RR比:3.0、リスク:2%

どちらの手法も期待値がリスクに対して0.2倍の手法でした。この期待値から、単利運用の見込み利益を次のように算出できます。

2万円×0.2×1000=400万円\text{2万円} \times 0.2 \times 1000 = \text{400万円}

※ 単利運用の見込み利益 = リスク × 期待値 × 取引回数

グラフから読み取れる利益は、いずれも単利運用の見込み利益よりも大きいことが分かります。勝率重視の手法においては、破産の確率から求めたリスクで運用することでさらに大きな利益をつくることができそうです。

また、勝率重視とRR比重視のどちらも、複利運用の方が有利であると言えそうです。

複利運用の特徴と対策

まとめです。

複利運用には以下の特徴があります。

  • 勝率重視の方が圧倒的に有利
  • RR比重視の手法ではリスクの取り方が重要
  • いずれにしても、長期運用なら単利よりも複利の方が有利

筆者が運用している手法はRR比重視のものです。2021年2月現在、次のように運用しています。

  • リスクを抑える
  • 複利で運用する

現在は、バックテストを重ねて勝率重視の手法を探しています。もし、勝率の良い手法を見つけることができたら次のように運用していきます。

  • 破産の確率を確認してリスクを増やす
  • 複利で運用する

勝率やRR比、決済のロジック等は手法次第なので調節が難しいですが、リスクは取引量で比較的容易にコントロールできます。複利運用においては損益分岐点と破産の確率を意識してリスクを調整することが重要です。

様々なリスクの取り方

トレードには、いろいろな取引量の決め方があります。この記事に掲載したものは、あくまでも一例です。

この記事に掲載した方法は、手法の勝率やRR比に依存しています。確実な勝率やRR比を導き出すことは不可能なので、その点には注意が必要です。

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yuya takahashi

タカハシ / 11年目の兼業投資家

投資やプログラミング、動画コンテンツの撮影・制作・編集などが得意。更新のお知らせは、LINE、メールで行っています。

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