どんな記事?
投資歴7年、一通りの運用経験のある筆者が、
- 投資スタイルの選択肢
- 目指す形に合う投資スタイル
について、できるだけシンプルに全体像をお伝えします。
投資スタイルの選択肢
かなり筆者の経験に偏っていますが、投資スタイルは以下の表のようにまとめられると思います。
投資対象 | 必要な時間 | マイナス収支の期間 | |
---|---|---|---|
ウルトラ長期 | 投資信託 | 5分/月 | 年単位 |
超長期 | 株、FX | 5分/日 | 年単位 |
スイング | 株、FX | 30分/日 | 年単位 |
デイトレード | 株、FX | 1時間/日 | 月単位 |
スキャルピング | 株、FX | 8時間/日 | 月単位 |
株、FXとしている箇所は、仮想通貨やコモディティ(金や原油の投資)が含まれます。不動産などの資金力が必要な投資はこの表には含めていません。
以下はある手法の資産推移のグラフです。Profitが利益、DrawDownは一時的なマイナス収支を表しています。「マイナス収支の期間」とは赤く印したような期間のことを指しています。つまり、掲載されているくらいの「マイナス収支が続く期間」を想定して(覚悟を決めて)おいた方が良いですよということです。この想定がないと、良いロジックであっても不安によって実践できなくなってしまいます。
まずここでは、表にあげた「投資スタイル」について解説していきます。
ウルトラ長期(造語)
「ウルトラ長期」というのは造語です。この期間を表す言葉が見つからなかったので、整理する上でこのような表現にしています。「ウルトラ長期」には以下のような特徴があります。
- 数十年後を見据えた運用(老後に備えるなど)
- ひたすらコツコツ積み立てる
- 投資信託で十分(工数をかけずプロに運用してもらう)
書いていたら少し長くなってしまったので、「ウルトラ長期」運用についての詳細は別の記事にまとめます。ひとつ重要なことは「投資信託なら何でも良い」というわけではありません。商品の選択と根拠、そして計画を立てることが重要です。気になる方は以下の記事を読んでみてください。
ここからは自ら売買する取引スタイル
ここから紹介する取引スタイルは自ら売買するものです。株式や為替(FX)、コモディティといわれる金や原油、仮想通貨などの投資商品を自らの手で売買していきます。
また、「掲載しているような結果に必ずなる」ということではなく、それぞれ「修得できたら、これくらいになれるんじゃない?」というものです。すべて筆者の経験や知識に基づいているので、もっと上手い人もいるかもしれませんし、勉強や工夫をしない方はマイナス収支になることも多くあります。
超長期
「超長期」の運用には以下のような特徴があります。
- 1回の取引(※1)が数年に及ぶことがままある
- マイナス収支の期間が数年に及ぶことがある
- 大きな利益を上げるには時間がかかる
- 分散投資が必須
- 根拠がないと長期間の強い不安に襲われることになる
※1「エントリーして決済するまで」を指す
超長期の手法では、どんなに良いロジックであっても長いマイナス収支の期間が発生します。これが根拠(確信)を持っていないロジックだとすると、長いマイナス収支の期間に、非常に強い不安に襲われてしまいます。その不安に押し潰されて、ついやってしまうのが「ロジックの変更」。結果、良いロジックが壊れてしまいます。
このような理由から、超長期のロジックの実践は、多くの人にとって非常に難しいものになっています。超長期の手法にはシンプルな優位性が眠っていることが多く、これがその最も大きな理由のひとつだと考えています。
スイングトレード
「スイングトレード」は割と一般的な取引スタイルです。
- 数日~数ヶ月の取引
- 1年がマイナス収支で終わることがたまにある
- ライバルが多く優位性が見つけづらい
一般的で、参加人口が多いスタイルのひとつです。さまざまな思惑が交錯します。競合が多いことによって優位性が見つけづらくなっています。
筆者は、このスタイルにおいても重要なことは「待つこと」だと考えています。つまり、利益を上げるための本質は「超長期」のスタイルと共通していると考えます。
デイトレード
投資に馴染みのない方でも「デイトレーダー」という言葉は耳にしたことがあるのではないでしょうか?割りと認知されている取引スタイルだと思います。
- 1日に数回の取引
- 月単位のマイナス収支はある
- 年単位のマイナス収支は出づらくなる
- ライバルが多く優位性が見つけづらい
- 手数料の影響が大きくなってくる
超長期のスタイルに忍耐が必要なのに対して、デイトレードは結果を待つ時間が短くて済むため多くの投資家に好まれています。しかし、デイトレードで利益を上げることは容易ではなく、この短期的な取引スタイルのライバルは専業トレーダーが多くいることを忘れてはいけません。
良いロジックを見つけることができれば、取引回数が多くなることから年単位・月単位の成績が安定しやすいスタイルでもあります。
スキャルピング
「スキャルピング」はスポーツみたいな投資です。瞬時に売買判断を下す必要があります。
- 数秒~数分の取引
- 月単位のマイナス収支も出づらくなる
- 投資をしている間はPCから離れられない
- 優位性が変化しやすい
- 手数料の影響が非常に大きくなる
スキャルピングでは瞬間的な売買判断が求められるため、取引中はPCに張り付いている必要があります。取るリスクに対して価格変動が大きく、少しの油断が致命傷になりかねません。専業トレーダーでないと難しい投資スタイルです。
また、非常に短期間の優位性をもとにしたロジックであるため、突然ワークしなくなるリスクもあります。常に優位性を探し続ける必要もありそうです。
流れに乗るか、細かく獲るか
ここまでは「期間(時間軸)」で取引スタイルを確認してきましたが、ここでは「どのような値動きを狙うか」を切り口に解説してみます。
投資におけるエントリーや決済といった売買判断には、大きく2つのパターンがあります。流れに乗る「トレンドフォロー」と、流れに逆らって細かな値動きを獲る「逆張り」です。例えば大きな長期の流れを獲るには「トレンドフォロー」が有効ですし、短期間の取引スタイルには「逆張り」が向いていたりします。
流れに乗る「トレンドフォロー」
「トレンドフォロー」とは、図の赤い矢印のように一方向の流れに乗るスタイルを指します。
- さまざまな指標を確認し、もみ合い相場(※1)をブレイクした(トレンドが発生するかもしれない)と思われるタイミングでエントリーする
- ブレイクを高い精度で判断することは難しく、多くの場合、勝率は低くなる(低い勝率)
- うまくトレンドに乗ると大きな利益が取れる(高いリスクリワード比率)
※1 値動きが小さく一方向の値動きがないことを指す。「横ばい」と表現することもある。
トレンドに上手く乗ることができれば非常に大きな利益を上げることができます。一方で、トレンドというのはいつも起きているものではなく、値動き全体のごく限られた期間にしか発生しません。また、トレンドの発生を事前に確認することは難しいため、「トレンドが発生しそう」「トレンドが始まったかもしれない」といったタイミングでエントリーすることになります。このような事情から「トレンドフォロー」は勝率が低くなる傾向があります。
細かく獲る「逆張り」
- 値動きの反転を予測したり確認してからエントリーする
- トレンドフォローがエントリーする局面で、逆のエントリーをすることが多い
- もみ合い相場(トレンドが発生していない期間)に強い手法
- 勝率を確保しやすい(高い勝率)
- 大きな利益を狙うことはできない(低いリスクリワード比率)
「もみ合いが終わってトレンドが発生するだろう」という思惑でエントリーする「トレンドフォロー(順張り)」に対して、「もみ合いが継続するだろう」という考えのもとで売買するのが「逆張り(カウンタートレード)」です。「逆張り」と「トレンドフォロー(順張り)」は相反する考え方であるため、両方の良いとこどりは難しいと言えます(不可能ではないかもしれません)。
あなたが目指す姿は?
あなたが目指す姿を実現するためには、どんな投資スタイルが向いているのか。
投資をしようと考えている「あなた」には、きっと何かしらの目指す姿(目的)があるはずです。「起業や夢のために資金をつくりたい人」「老後への備え」「少しだけ良い暮らしをしたい」「今の環境を脱出したい」など、想像すると切りがありません。ここでは、以下の3つの目的に絞って、相性の良い投資スタイルを解説します。
これで、おそらくほとんどのニーズ(一攫千金以外)をカバーできるはずです。
老後の資金づくり
年金に頼らない「老後の資金づくり」は、実はあまり難しくありません(と思っています)。適切な計画と、着実な実行、そして時間を味方につけることで、多くの人が再現可能なのではないかなと思います。言い換えるなら「どうすれば良いかを知らない・情報収集していない人が多いだけ」といったところでしょうか。
- 「ウルトラ長期」の運用(米株、世界株での積立)
- 積立NISAやNISA、iDeCoの活用
- 平均年間利益率:数% の運用(あくまでも平均)
目的が「老後の資金づくり」であるならば、わざわざ自らの手で売買する必要はありません。適切な投資信託(なんでも良いわけではない)で、工数をかけずにじっくり運用していくことが可能だと考えています。
- 学習のコスト(時間・お金)
- 修得のコスト(実践の時間・失敗の損失)
などを、わざわざ掛ける必要もないと思います。
詳細については「ウルトラ長期」と同じく別の記事にまとめました。気になる方は以下の記事をお読みください。
5~10年でまとまった資金をつくる
- 早期セミリタイア
- 独立資金の調達
- 生活基盤の安定
などを目指す「兼業トレーダー」といったところでしょうか。
数年で大きな資金をつくるには、自らの手でトレードをする必要がでてきます。「ウルトラ長期」の運用と比較すると、一気に「攻めの姿勢」が必要なるイメージです。「攻めの姿勢」とは、例えば次のようなことです。
勝てるロジックであることが大前提で、、、
- 継続的に投資をする(長い時間を味方につける)
- 適切なリスクを取る
- リスクを分散する
- 複利を活かす
資金力(元手)があればもう少し控えめな運用でも良いのですが、資金力がないことを前提とすると、ちょっとした覚悟が必要です。「サクッと(楽して)パッと(短期間で)儲かるノウハウ」みたいなものは残念ながら存在しません。5~10年でまとまった資金をつくるには計画的に継続して運用する必要があります。
- 10年くらいなら超長期
- 5年以下でスイングトレード、デイトレード
くらいが目安だと思います。スキャルピングは専業でないと厳しいです。個人的にはデイトレードも兼業には不向きだと思います(かなり成熟した投資家ならいけるかも)。
投資だけで生活していく
いわゆる「専業トレーダー」です。
当然、求められる要件は厳しくなります。以下は筆者個人の考えですが、
- 1億円以上の運用資金
- ほとんどの時間を投資に使う
- 適切なリスクを取る(リスクのコントロール)
- 多くのロジックや銘柄によるリスクの分散
- できるだけ月単位のマイナスを出さない
- 金融危機への対策を万全にする必要がある
日々の生活費があるので、「長期的に~」なんて悠長なことは言ってられません。月単位のマイナスを極力ださないようにしながら、着実に収益をあげていく必要があります。年単位のマイナスなんてもっての外ですね。爆発的に増やすことよりも安定したトレードをすることが求められます。
月単位の収益を安定させるには、どうしても取引回数を増やす必要があります。なので、数ヶ月、数日単位だった取引を、時間、分単位にしていく必要があります。つまり、PCに張り付いて投資を行うということです。
トレードスタイルでいうと、筆者はすべてのスタイルのロジックで分散投資をするべきだと考えています。ウルトラ長期、超長期、スイングトレード、デイトレード、スキャルピングのすべてです(デイトレードとスキャルピングはどちらかでも良いかもしれません)。月単位の収益を安定させるための「デイトレード」「スキャルピング」を行いながら、長期的に全体を底上げするための「ウルトラ長期」と「超長期」「スイングトレード」の運用をするイメージです。「超長期」と「スイングトレード」に至っては複数の手法を分散しても良いくらいです。
あくまでも「筆者が専業になるならこうする」という話ですが、何にしても、とにかく専業は過酷だと思います。
資金力と生活スタイルから
最後に、あなたの置かれている状況から「どんな投資スタイルが良いか」を考えてみたいと思います。
資金力
当たり前なことですが、
- 1億円の1%は100万円
- 100万円の1%は1万円
この違いは、投資をする上で非常に重要です。戦い方が大きく変わります。
資金が潤沢にある
- 必要以上に大きなリスクを取る必要がない
- 短期的な成果に固執する必要がない
- チャンスをじっくり待つ余裕がある
- 基本的にどんな市場でも参加できる
- 手数料が優遇されることが多い
例えば、複利による運用はどんなに資金が増えても一定の割合のリスクを取りにいくために、大きな失敗が許されません。そういうリスクを抱えています。しかし、資金力がある投資家なら、複利の運用をする必要はありません。単利で運用すると利益を積み重ねることができる分、複利よりも余裕が生まれます。資金力がないと参加が難しい市場があったりもします。手数料も優遇されますね。
とにかく、ほとんどの面で資金力がある方が有利です。投資スタイルへの制限もありません。
十分な資金がない
一方で、資金力がない人にもいくつかメリットがあります。
確からしいロジックであることが大前提ですが、、
- 元手を100%ベットするような(全額なくなるかもしれない)ロジックを回せる
- 流動性がすくない市場でも戦える
100%ベットする(賭ける)というのは、1回の取引で大きくリスクを取るということではありません。徹底的に検証を重ねた確からしいロジックで、
- 複利を活かした運用で
- 5年かければ資金が100倍になるかもしれない
- 失敗すれば資金がなくなるかもしれない
こういうものにチャレンジできるということです。
資金力がある投資家は、資金を守る必要があるので勝負にでることはできません。それに対して、十分な資金がない投資家はこういう勝負にでることができます。例えば、この確からしい異なる5つの手法で30万円ずつ運用すると、さらに分散できて効果的です。流動性については賛否があると思いますが、資金力がある投資家よりも参加しやすいことは事実だと思います。
小資金の投資家は、資金がない分、時間を味方につける(複利を活用する)必要があります。複利を活用するには取引回数が多いほうが有利なので、
- スイングトレード
- デイトレード
- スキャルピング
あたりでの運用が向いていると思いますが、「超長期」が不向きかというとそんなこともありません(「ウルトラ長期」はさすがに難しいかもしれません)。
時間
ここでいう「時間がある・ない」というのは「1日の中で投資にあてられる時間が多い・少ない」という意味で使っています。「お金を増やすことに焦りがない」とか「短期間でお金を増やさなければならない」などということではありません。
時間がある
時間も重要な要素のひとつです。時間がある投資家は、とにかく取引回数を増やすことを意識すると結果がでやすくなると思います。つまり、
- デイトレード
- スキャルピング
などの取引スタイルですね。投資の成績を左右する要素は「勝率」「リスクリワード比率」「取引回数」なのですが、取引回数は時間がないと増やすことが難しい要素です。時間がある投資家は「取引回数」を増やせるロジックを考えていくと成果が向上します。
時間がない
時間がない投資家は、比較的、長期の手法で投資をしていくしかありません。
- ウルトラ長期
- 超長期
- スイングトレード
あたりで運用するのが良いと思います。
これはあくまでも筆者の考え方であって、兼業トレーダーでデイトレードをする方はいます。しかし、筆者が知っている兼業のデイトレーダーは、みなさん成熟した投資家の方々です。チャンスを待って、チャンスのときだけトレードします。自分の確固たるルールを持っています。自分自身を律することができる投資家です。
そういうことができる自信がある方はデイトレードでも良いと思いますが、筆者はあまりオススメしません(デイトレードにもリスクにさらす時間が短いというメリットがありますが・・)。
あとは、「時間がない人向け」といっても、けっこう時間を捻出する必要はあります。情報収集や日々の管理などで少なくとも毎日1時間くらいは必要になるんじゃないかなと思います。
少し話が逸れますが、プログラミングができる方は自動化してしまうのもひとつの手段だと思います。
このカテゴリーで扱う投資スタイル
さて、長々と投資スタイルについて解説してきましたが、この「イチから投資」カテゴリーでは(というか、このブログ全般ですが)以下の投資スタイルに対応しています。
- 超長期
- スイングトレード
- デイトレード
もちろん他の投資スタイルにおいても役に立つ情報も多くありますが(資金管理リスク管理など)、基本的には上記のスタイルに対応しているということを念頭に置いてお読みいただければと思います。
あと、筆者が得意なのはトレンドフォロー(低勝率・高リスクリワード比率)です。高い勝率のトレードにあこがれていますが、そのあたりはまだ研究中です。
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投資初心者の同僚にイチから投資を教えることに。せっかくなので「教える過程」をまるっと公開。まずは「あとは経験を積むだけ!」な状態を目指してもらいます。

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