02 - 1.「常勝トレーダーの思考」を確認する3つのクイズ(解答編)

Posted on June 2nd, 2019Updated on February 21st, 2020
02 - 1.「常勝トレーダーの思考」を確認する3つのクイズ(解答編)

※ この記事は最終更新日から4年以上が経過しています。

どんな記事?

「常勝トレーダーの思考」を確認する3つのクイズ」の解答編です。「どれが最良の選択肢だったか」と「その理由」について解説していきます。

ふたつの封筒

このクイズは次のようなものでした。

envelope
  • どちらかの封筒には、もう一方の封筒の「倍の金額」が入っている
  • 相手の封筒を確認することはできない
  • 「封筒の交換」を申し出ることができる

あなたは A の封筒を受け取り、「10,000円」が入っていることを確認した。
相手の封筒(B)を確認することはできないが、「封筒の交換」を申し出ることができる。

選択肢は次の4つ。

  1. 1万円が5千円(半分)になってしまうかもしれないので、交換しない
  2. 1万円が2万円(倍)になるかもしれないので、交換する
  3. このゲームが1回しかできないなら、交換しない
  4. このゲームが100回くらいできるなら、交換し続ける

答えはどれか

④ このゲームが100回くらいできるなら、交換し続ける

答えの解説

このクイズはトレードの判断基準を表しています。

  • 勝率で判断する
  • 期待値で判断する

勝率で判断するというのは「確実に勝てそう」ということを重視しています。それ自体は悪いことではないのですが、期待値で劣っているのに確実さ(勝率)を取りにいくのは危険です。

このクイズのポイントは以下の違いです。

  • 勝率で判断 → "交換しない" が有利
  • 期待値で判断 → "交換する" が有利

この違いは2つの勝率と期待値を比べてみるとよく分かります。

交換しない

  • 勝率 → 100%
  • 期待値 → 10,000円(10,000 × 100%)

交換する

  • 勝率 → 50%
  • 期待値 → 12,500円(5,000 ✕ 50% + 20,000 ✕ 50%)

勝率は「交換しない > 交換する」で、期待値は「交換する > 交換しない」だということが分かりますね。

このクイズの場合は、どちらも利益なので見落としがちですが、有利なのは間違いなく「交換する」です。100回どちらか一方を選び続けると、封筒の交換を終える頃には「交換しない」は100万円になり、「交換する」は125万円になるからです。

よって、このクイズの理想的な答えは「④ このゲームが100回くらいできるなら、交換し続ける」になります。

Twitterのアンケート

Twitterの皆さんの解答はこんな感じでした!

公平なトランプのゲーム

クイズの確認をします。

card
  • ハートのトランプが5枚、スペードが5枚ある
  • 10枚のトランプをよくシャッフルして順番に引く
  • ハートが出たら勝ちで、スペードは負け
  • 手持ちの資金は10万円
  • 勝てば、その時点の資金が50%増える
  • 負ければ同じく50%減る
  • 8枚引いた時点で儲けていたらやめても良い

選択肢は次の4つ

  1. 儲かりそう! やる!
  2. 負けはしないから、やる。
  3. 負けそうだから、やらない。
  4. なんかあやしい。やらない。

答えはどれか

③ 負けそうだから、やらない。

答えの解説

一見すると公平で有利そうですが、実は、このゲームで「複利運用の危うさ」を実感することができます。

複利については、次のことが言えます。

  • 複利運用は悪ではない
  • 単利と複利の違いを理解する必要がある
  • 複利運用で必要な勝率とRR比を知る必要がある

つまり「知らずしらず複利運用になっていると危ない」という話であって、このクイズで間違える人は「そうなってしまっているかも」ということです。

さて、このクイズのポイントは「次の点をどう捉えるか」だったりします。

  • 勝ち → その時点の資金が50%増える
  • 負け → 同じく50%減る

これは計算してみるとよく分かります。例えば、最初に負けるとすると5万円減ってしまいます。所持金は10万円から5万円になりますね。その次に勝てたとすると5万円の50%なので、2.5万円増えます。

あれれ、おかしいですね。

「50%のプラス」と「50%のマイナス」で公平だったはずなのに、2.5万円足りません・・。

実は問題文の「その時点の資金」というのが複利運用を表していて、複利運用だと50%の損失には100%のリターンが必要になります。で、この違いが積もりにつもると、8枚引いた時点で、

  • 5枚勝ち
  • 3枚負け

だったとしても、トータル負けてしまうわけです。

ちなみに、単利運用なら「負け → 50%減る」の損失は、「勝ち → 50%増える」で取り戻すことができます。ただし、元金10万円でそれに対する50%だとすると「2連敗で全額なくなってしまう」ということがあるので注意が必要です。

Twitterのアンケート

コイントスの賭け

最後のクイズです。

coin

どちらも元金は10,000円で、それぞれのルールは次の通り。

Aのコイントス

  • 一回5,000円支払う
  • 一人10回までしかできない
  • 表がでると15,000円獲得
  • 裏の場合は0円

Bのコイントス

  • 一回1,000円支払う
  • 一人100回できる
  • 表:1,500円獲得
  • 裏:0円

選択肢は以下の4つ。

  1. 勝てば3倍! Aのゲームをやる!
  2. そこそこ勝ったら勝ち逃げする。Aのゲームをやる。
  3. 一回の支払いが少ない。Bのゲームをやる!
  4. 100回じっくりできる。Bのゲームをやる。

答えはどれか

今回は正解が2つあります。

③ 一回の支払いが少ない。Bのゲームをやる!
④ 100回じっくりできる。Bのゲームをやる。

根拠をもって③④の解答を出来る人は「分かってるなあ」という感じです。

答えの解説

このゲームでは「大数の法則」と「1回の掛け金」の理解が試されます。

まずはクイズのルールから分かる、それぞれの特徴を確認してみましょう。

コイントス → 勝率50%

A のコイントス

  • 元金の半分が参加費 → 単利で、リスク50%
  • 期待値 → 5,000円(-5,000 ✕ 50% + 15,000 ✕ 50%)
  • 一人10回まで

B のコイントス

  • 元金の1割が参加費 → 単利、リスク10%
  • 250円(-1,000 × 50% + 1,500 × 50%)
  • 一人100回できる

期待値で考えると明らかにAの方が有利です。しかし、回数に条件がありますね。ここから収益の見込みを計算することができます。

  • A の収益の見込み → 50,000円(期待値5,000 × 10回)
  • B の収益の見込み → 25,000円(期待値250 × 100回)

収益の見込みで考えても明らかにAの方が魅力的です。

一方で、投資家は常にリスクのことも考えなくてはいけません。この観点で考えてみると、実は、A は「1回の掛け金」が大きすぎます。つまり、

  • A → 数回の連敗で負けてしまう
  • B → 相当な連敗でも耐えられる

という違いがあります。これは「破産の確率」を算出してみると分かりやすいです。

  • A の破産の確率 → 29.55%
  • B の破産の確率 → 3.73%

破産の確率は通常1%以下を目指すものです。A のルールだと「大丈夫そう」と感じる方も多いと思いますが、勝率50%でも5連敗くらいは割とあります。期待値がどんなに高くても、元金10,000円に対して1回の掛け金が5,000円だと破産してしまうわけです。

あとは「大数の法則」の違いもあります。コインを10回投げても表は必ずしも5回ではありません。しかし、100回投げると50回に、1000回投げると500回に近づきます。回数が多ければ多いほど再現性が増します。A だと回数が全然足りません。すごく儲かるかもしれませんが、その逆も大いもあり得ます。つまり、ただのギャンブルです。

以上の理由からBに関連する選択肢を正解としています。で、「一回の支払いが少ない」と「100回じっくりできる」は、いずれも理由として正しいので③④どちらも正解です。

ちなみに、実際の投資では「元金をどう捉えるか」で考え方が大きく変わると思います。

  • 少額だからなくなっても良い → Aで大きく掛ける
  • 元金がなくならないように取引するべき → Bで堅実に

しかし、A の場合は100人中29人の元金がゼロになってしまいます。実際の投資なら、選ばない方が良い選択だったりします。

あと「勝率50%でも5連敗」には根拠があります。気になる方は次の記事を読んでみてください。

Twitterのアンケート

まとめ

さて、ここで改めて村上世彰さんの言葉を引用します。

いろいろな投資案件において、きわめて冷静に分析や研究をして、自分独自の「期待値」を割り出している。たとえば、百円を投資する場合の「期待値」の計算方法は、次のようになる。

  • 0円になる可能性が20%、200円になる可能性が80%であれば、期待値は1.6(0×20%+2×80%=1.6)
  • 0円になる可能性が50%、200円になる可能性が50%であれば、期待値は1.0
  • 0円になる可能性が80%、200円になる可能性が20%であれば、期待値は0.4

(中略)

私の場合はすべてが「期待値」による判断なので、0円になる確率が5割を超えていても、勝率が1勝4敗でも、トータルリターンが1.0を大きく超えるかどうかで判断する。

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何となくイメージが湧くようになりましたでしょうか?

投資は確実さ(勝率)を求めるものではありません。損益合計のプラスを目指すものです。それに必要なのは期待値の理解です。そして、期待値がプラスでも破産することがあります。ネックになるのは1回の掛け金と複利です。

実は、このあたりは「理解するには分かりづらいけど、実践するには簡単なところ」です。なぜなら、答えが計算で導き出せるからです。一方で、期待値の向上には一定の技術が必要です。経験を積む必要もあります。答えも1つではありません。

つまり、1回の掛け金と複利にさえ気をつければ期待値を再現することができるし、期待値の向上にだけ集中することができるということです。

掛け金と複利はいわゆる「資金管理」です。「資金管理」は簡単なので、さっさとポイントを抑えて期待値の向上に努めていきたいものです。

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投資初心者の同僚にイチから投資を教えることに。せっかくなので「教える過程」をまるっと公開。まずは「あとは経験を積むだけ!」な状態を目指してもらいます。

yuya takahashi

タカハシ / 11年目の兼業投資家

投資やプログラミング、動画コンテンツの撮影・制作・編集などが得意。更新のお知らせは、LINE、メールで行っています。

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